ElevenLabsとは?
ElevenLabsは、音声に特化したAIを開発・提供する企業ElevenLabsのサービスです。テキストの読み上げで知られていますが、現在は声のクローンや声のデザイン、動画の吹き替え、文字起こし、音楽や効果音の生成、電話やWebで会話する音声エージェントまで、音声に関わる作業を幅広く扱うプラットフォームになっています。Webアプリでの制作から、API経由で自社サービスに組み込む使い方まで対応しているのが特徴です。
ElevenLabsでできること
公式は、製品を大きく3つの領域に分けています。
- ElevenCreative:読み上げ(Text to Speech)、声のクローン、Voice Design、吹き替え、文字起こし、音楽、効果音、Studioなど、音声や動画のコンテンツを作るためのWebアプリ。
- ElevenAgents:電話・Webサイト・アプリで利用者と会話するAIエージェントを作る仕組み。
- ElevenAPI:上記の機能を開発者が自社のアプリやサービスに組み込むためのAPI。
同じアカウントとプランで複数の機能を使えるため、ナレーションの作成から多言語化、問い合わせ対応の自動化までを1つのサービスでまとめやすい構成です。
最新の音声生成モデル(2026年10月時点)
2026年10月6日時点で、読み上げの最新モデルはEleven v4と、そのリアルタイム版のEleven v4 Turboです。公式のモデル一覧では、用途に応じて次のモデルが案内されています。
- Eleven v4:最新で最も表現力の高いモデル。感情表現や複数話者の会話に向き、1回に約1万文字まで生成できる。
- Eleven v4 Turbo:v4系のリアルタイム向けモデル。応答の遅延は中央値で約100ミリ秒とされ、音声エージェントに向く。
- Eleven v3:前の世代の表現力重視モデル。現在も利用できる。
- Eleven Multilingual v2:安定した品質で長文の読み上げに向くモデル。
- Eleven Flash v2.5:約75ミリ秒の低遅延と低価格を重視した高速モデル。
対応言語の数はモデルごとに異なり、v4とv4 Turboは90以上、v3は70以上、Multilingual v2は29、Flash v2.5は32言語とされています。どのモデルも日本語に対応しています。
音声合成(Text to Speech)
入力したテキストを、選んだ声で自然な音声にする基本機能です。読み上げる言語はテキストから自動で判断され、発音やアクセントは選んだ声の特徴に左右されます。英語を母語とする声で日本語を読ませると、なまりが出ることがあるため、日本語の文章には日本語向けの声を選ぶのが基本です。ナレーション、動画の音声、オーディオブック、eラーニング教材、アプリの音声案内など、文章を音声にするあらゆる用途の土台になる機能です。
声のクローン(Instant/Professional)
声のクローンには2つの方式があり、使えるプランと条件が異なります。
- Instant Voice Cloning(Starter以上):短い音声サンプルから、すぐに声を再現する方式。保存するときに、その声をクローンする権利と本人の同意があることを確認する必要がある。
- Professional Voice Cloning(Creator以上):30分から2時間以上の録音で学習し、より本人に近い声を作る方式。作れるのは自分の声だけで、他人の声は同意があっても作れない。音声による本人確認が必須。
他人の声を勝手に再現できる機能ではありません。家族や同僚など他人の声を使いたい場合は、本人が自分のアカウントで声を作り、共有機能で共有する手順になります。
Voice Design
Voice Designは、「落ち着いた低めの男性の声」のような文章の説明から、新しい声を作る機能です。生成された複数の候補を聞き比べ、気に入ったものを保存して読み上げに使えます。実在する人の録音を使わずにオリジナルの声を作れるため、声のクローンとは別の機能として使い分けます。無料プランでも利用できます。
文字起こし(Speech to Text)
音声や動画から文字を起こす機能で、現行のモデルはScribe v2です。90以上の言語に対応し、日本語も含まれます。最大32人までの話者の聞き分けや、専門用語を正しく認識させるキーワード指定に対応しています。リアルタイムで文字にするScribe v2 Realtimeと、医療の会話向けのScribe v2 Medicalもあります。インタビューや会議の記録、動画の字幕づくりの下準備に使えます。
吹き替え(Dubbing)
動画や音声を別の言語に翻訳し、元の話者の声の特徴を保ったまま吹き替える機能です。90以上の言語に対応し、複数の話者を自動で聞き分けます。自動で吹き替える方法のほか、Starter以上ではDubbing Studioで翻訳文やタイミングを細かく編集できます。なお、新しいDubbing v2モデルは公式ドキュメントでAlphaと表記されています。また、吹き替え後の動画は確認用の品質(主に1080p)で出力され、元の動画と解像度が一致しない場合があると案内されています。
音楽生成(Music)
Eleven Musicは、文章で曲の雰囲気や構成を指示して、ボーカル入りの曲やインストゥルメンタルを作る機能です。最新モデルはEleven Music v2.5で、歌詞とボーカルは英語・スペイン語・ドイツ語・日本語など複数の言語に対応しています。曲のセクション単位で音や歌詞を編集することもできます。Webでは無料プランを含むすべての利用者が使えますが、商用利用はStarter以上、Music APIは有料プランのみです。また、Musicには独自の利用条件があり、実在のアーティスト名や既存曲の歌詞を入力すること、特定のアーティストの声をまねさせることは禁止されています。武器、たばこ、処方薬、アダルト、宗教団体、政治活動・選挙に関わる用途にも使えません。
効果音(Sound Effects)
「木の扉がきしむ音」のような説明から効果音を生成する機能で、動画やゲーム、ポッドキャストの音づくりに使えます。注意点として、生成した効果音を単体の素材集や効果音ライブラリとして販売・配布することは禁止されています。また、生成した効果音はほかの利用者にも提供される扱いになっており、製品画面の設定でオフにできます。
Studio
Studioは、長めの音声や動画のプロジェクトを作るための制作スペースです。作りたい内容を文章で伝えると、Studio Agentが最初の下書きを作り、生成した音声・映像・画像をタイムライン上で組み合わせて仕上げられます。オーディオブックやポッドキャスト、解説動画のナレーションなど、1本の短い読み上げでは収まらない制作に向いています。プロジェクトをチームと共有してコメントを集めることもできます。無料プランでは3プロジェクトまでです。
音声エージェント(ElevenAgents)
ElevenAgentsは、電話やWebサイト、アプリで利用者と音声やチャットで会話するAIエージェントを作る仕組みです。読み上げ機能の延長ではなく、会話の頭脳になる言語モデル(LLM)、知識、外部ツールを組み合わせて動きます。
- 使う言語モデルを選べるほか、独自のモデルも接続できる。
- 5,000以上の声と31の言語から、エージェントの声と言語を設定できる。
- 文書を登録してナレッジベースとして参照させられる。
- 外部ツールやMCPサーバーを呼び出して、予約や情報の取得などの処理を行える。
- Webサイトへのウィジェット埋め込み、SIPトランクやTwilioを使った電話、まとめての発信に対応。
Agentsの料金は、同じプランの中で「通話の分数」として表示されます。無料プランでも毎月15分の通話を試せます。
無料プランでできること
ElevenLabsには、期限なく使える無料プランがあります。毎月1万クレジットが付与され、読み上げ、文字起こし、効果音、Voice Design、音楽、Studio(3プロジェクトまで)などを試せます。ElevenAgentsでは毎月15分の通話が含まれます。ただし、無料プランで作ったものは商用利用できず、作った音声には帰属表示(ElevenLabsで作ったことの表記)が必要です。Instant Voice Cloningも使えません。クレジットの翌月への繰り越しもありません。
料金プラン
2026年10月6日時点の通常価格です(米ドル、税別)。
- Free:0ドル(毎月1万クレジット)
- Starter:月6ドル(3万クレジット)。商用ライセンス、Instant Voice Cloning、Dubbing Studio、音楽の商用利用
- Creator:月22ドル(12万1,000クレジット)。Professional Voice Cloning、追加クレジットの購入
- Pro:月99ドル(60万クレジット)。APIで高音質(44.1kHzのPCM)出力
- Scale:月299ドル(180万クレジット、3席)
- Business:月990ドル(600万クレジット、10席)
- Enterprise:個別見積もり(専用の契約条件、SSO、HIPAA向けのBAAなど)
年払いは月額の10か月分の料金で、Starterは月あたり5ドル、Creatorは約18.33ドル相当になります。初月の割引などのキャンペーンが表示されることがありますが、期間限定の価格なので、継続して払う通常価格と分けて確認しましょう。日本円での料金表示はありません。
クレジットの仕組み
ElevenCreativeの機能は、プランに含まれる共通のクレジットを消費して使います。消費量は機能ごとに異なり、たとえば読み上げはおおむね1文字1クレジット、文字起こしは1分あたり330クレジット、音楽は1分あたり900クレジット、効果音は1回200クレジットが目安です。吹き替えは、自動吹き替えかDubbing Studioか、透かしを入れるかどうかで1分あたりの消費量が変わります。クレジットは毎月の請求日にリセットされ、有料プランでは使い残しを最大2か月分まで繰り越せます。機能ごとに単位が違うため、「何分の動画を作れるか」は使う機能の組み合わせによって変わります。
商用利用と権利
商用利用できるかどうかは、プランと機能によって変わります。
- 無料プラン:商用利用はできず、非商用の目的に限られる。作った音声には帰属表示が必要。
- 有料プラン(Starter以上):商用利用できる。ただし禁止用途を定めたポリシーに従う必要がある。
- 音楽・効果音・吹き替え:上で紹介したように、それぞれ追加の利用条件がある。
有料プランに加入している間に作ったコンテンツは、解約後もそのまま商用ライセンスで使い続けられます。一方、加入していない状態で新しく作った音声は、常に帰属表示が必要です。出力に対する権利は利用者が持ちますが、ElevenLabsは入力や出力をサービスの改善や新しい製品の開発に使うライセンスも持っています。また、商用利用できることと、出力が他人の権利を侵害しないことが保証されることは別の問題です。サービスは現状のまま提供され、出力がほかの利用者と似る可能性もあるため、公開前の確認が欠かせません。
声の権利と同意
声は、その人を特定できる大切な情報です。ElevenLabsでは、Instant Voice Cloningでは権利と同意の確認、Professional Voice Cloningでは本人の声に限ったうえでの本人確認を求めています。Voice Libraryにある、ほかの利用者が共有した声を使う場合も、規約と禁止用途のポリシーの範囲で使う必要があります。禁止用途のポリシーでは、だます目的でのなりすまし、本人確認の仕組みを回避すること、政治家や公職者のなりすまし(本人の許可があっても禁止)などが定められています。
API・SDK
ElevenAPIを使うと、読み上げ、文字起こし、声のクローンとVoice Design、Voice Changer、吹き替え、音楽、効果音、ElevenAgentsを自社のアプリやサービスに組み込めます。REST APIとWebSocketに対応し、公式SDKはPythonとJavaScript(TypeScript)です。ElevenAgents向けには、React、React Native、Swift、Kotlin、Flutterなどのクライアント向けSDKも用意されています。APIの読み上げ料金は1,000文字あたりで、2026年10月6日時点の通常価格はEleven v4が0.08ドル、v4 Turboが0.04ドル、Flash v2.5が0.04ドルです。API料金はWebアプリのプランの見え方とは別に案内されているため、組み込みに使う場合はAPIの料金ページを確認しましょう。
データの扱い・学習
ElevenLabsのプライバシーポリシーでは、利用者が入力した音声・テキストや生成した内容、フィードバックなどを、AIモデルの研究・学習・改善に使うことがあるとされています。学習用のデータは、個人と結びつかないように切り離す設計だと説明されています。学習への利用は、アカウントの「Terms and Privacy」にある「Data use」の設定でオフにできます。ただし、オフにした後に提供したデータにだけ適用され、それ以前のデータには及びません。個人データの削除を求めることもできます。データを保存しないZero Retention Modeは、Enterpriseプランで、APIから使う場合に限られます。
セキュリティと安全対策
ElevenLabsは、セキュリティ情報をまとめたTrust Centerを公開しています。SOC 2 Type 2の報告書と、ISO 27001、ISO/IEC 42001などの認証書が掲載され、HIPAAへの対応についての資料もあります。Enterpriseでは、SSO、HIPAA向けのBAA、データ処理契約(DPA)などの個別条件を相談できます。悪用への対策としては、有名人など悪用のリスクが高い声のクローンの制限、Professional Voice Cloningの本人確認、生成した音声を作成者までさかのぼれる仕組み、AI分類器と人による監視があります。ElevenLabsで作られた音声かを判定するAI Speech Classifierを公開し、コンテンツの来歴を示す標準規格C2PAにも参加しています。ただし、これらの対策で悪用を完全に防げるわけではありません。
日本語対応と対応デバイス
日本語の音声は、読み上げ、文字起こし(Scribe v2)、音楽の歌詞とボーカルで公式に対応しています。公式サイトには、トップページや料金、利用規約、安全対策のページなどの日本語版があります(料金は日本語ページでも米ドル表示)。一方で、アプリの画面やヘルプ、ドキュメントまで含めたサービス全体が日本語化されているわけではなく、開発者向けのドキュメントなどは英語で読む場面があります。日本語の音声を作るためのサービスとしては十分使えますが、サービス全体が日本語に完全に対応しているわけではない点は知っておきましょう。対応デバイスは、Webブラウザ、iOSアプリ、Androidアプリです。モバイルアプリでは読み上げ、Instant Voice Cloning、Voice Library、Voice Changer、Voice Designなどが使え、Professional Voice Cloning、Studio、吹き替え、音楽、ElevenAgentsはWebで使います。
Suno・HeyGenとの違い
どれが優れているかではなく、何を中心に作るツールかで選ぶのがおすすめです。
- Suno:歌と伴奏のある曲づくりが中心。ElevenLabsもMusicで曲を作れるため重なる部分はあるが、ElevenLabsは声・ナレーション・吹き替え・エージェントまで含む音声全般のプラットフォーム。利用規約もそれぞれ別。
- HeyGen:AIアバターが話す動画の制作や動画の翻訳が中心。吹き替えは重なるが、ElevenLabsは映像よりも音声そのものの生成・編集に強い。
音声・動画の編集作業を中心に考えるならDescript、ナレーション用の読み上げに絞って比べるならMurfもあわせて検討するとよいでしょう。
おすすめの人と基本的な使い方
ElevenLabsは、次のような人に向いています。
- YouTubeや研修動画、オーディオブックのナレーションを作りたい人
- 動画や音声を多言語に展開したい人
- 電話やWebの問い合わせに音声エージェントを使いたい企業
- アプリやサービスに音声機能を組み込みたい開発者
基本的な使い方は次のとおりです。
- 公式サイトでアカウントを作成する(まずは無料プランで試せる)。
- Text to Speechを開き、Voice Libraryなどから声を選ぶ。
- テキストを入力し、モデルを選んで音声を生成する。
- 仕上がりを聞いて調整し、音声をダウンロードする。
- 商用で使う場合は、Starter以上のプランで生成する。
よくある質問
Q. ElevenLabsは無料で使えますか。
A. 使えます。無料プランでは毎月1万クレジットで読み上げや文字起こしなどを試せます。ただし商用利用はできず、帰属表示が必要です。
Q. 作った音声をYouTubeや仕事で使えますか。
A. Starter以上の有料プランで作った音声は商用利用できます。音楽・効果音・吹き替えには追加の利用条件があるため、用途に合わせて確認しましょう。
Q. 日本語に対応していますか。
A. 日本語の読み上げ、文字起こし、音楽の歌詞に対応しています。ただし、サービス全体が日本語化されているわけではなく、ドキュメントなどは英語で確認する場面があります。
Q. 他人の声をクローンできますか。
A. Instant Voice Cloningでは、権利と本人の同意があることの確認が必要です。Professional Voice Cloningは本人の声だけが対象で、本人確認が必須です。
Q. 解約したら、それまでに作った音声は使えなくなりますか。
A. 有料プランの加入中に作ったコンテンツは、解約後も商用ライセンスで使えます。解約後に新しく作る音声には帰属表示が必要です。
Q. 入力した音声やテキストは学習に使われますか。
A. 使われることがあります。設定の「Data use」でオフにできますが、オフにした後のデータにだけ適用されます。